今回のテーマは、「言葉」です。

「無理・ムリ・むり」という言葉
最近の若い人が、
「無理・ムリ・むり」
と言って、頼まれごとを拒否する場面を見たことがあります。
「最近の若い人」
だなんて、自分がおじさんになってしまったみたいで、あんまりこんな言い方はしたくはないのですが。
とはいえ、私はすでに十分立派な「おじさん」です(汗)。
言葉の意味から考えると、
「できない」
という意味に思えます。
しかし、実際にこの言葉が発せられるとき、
「できない」
だけではないニュアンスが感じられます。
この辺りのことが分かると、頼みごとを拒否されたときにも、その原因が探りやすくなります。
原因がハッキリして、それを取り除くことができれば、頼まれてくれるようになります。
ただ単に、ほめたり、おだてたり、逆に脅したり、強制したりしてやらせるのではなく、行動を邪魔する障壁を取り除いてあげることが、お互いをハッピーにしてくれます。
できないのか、やりたくないのか
ここで、私がセミナーのときに、実験することの一つをご紹介しましょう。
私が受講生に向けて、こう言います。
私:「手を挙げてください。」
すると、受講生の全員、もしくは何人かが手を挙げてくれます。
そのとき手を挙げてくれた人にこう尋ねます。
私:「なぜ、今、手を挙げたのですか?」
受講生:「木村さんが『手を挙げてください。』と言ったから」
私:「なるほど。では前に出てきて、裸になってください。
私が言ったら、やるんですよね?」
と、ちょっと意地悪なことを言ってみます。
たいていは、次のような反応が帰ってきます。
受講生:「いや、それはできません。」
(ときどき、ノリの良い人がいて、本当に脱ぎ出すことがあって、そのときは、ちょっと焦ってしまいますが(笑))
私:「本当に『できない』のですか?
お風呂に入るときには、裸になりますよね?」
と、さらに意地悪を言ってみます。
受講生:「そうですけど、ここはお風呂ではありません。
恥ずかしくてできません。」
私:「ということは、『できない』のではなくて、
『やりたくない』ってことですね。」
受講生:「そういうことです。」
私:「分かりました。
では、逆立ち状態で腕立て伏せをしてください。」
受講生:「それは、できません。」
私:「『できる』けど、『やりたくない』ということですか?」
受講生:「いえ、『やっても良い』けど、『できません』」
私:「なるほど。」
この実験を詳しく解説してみましょう。
「手を挙げた」のは、手を挙げることができるし、手を挙げても良いと思ったから。
「前に出て、裸にならない」のは、裸になることはできるけど、裸になっても良いとは思わなかったから。
「逆立ち状態で、腕立て伏せをしない」のは、腕立て伏せをしても良いとは思ったけれど、腕立て伏せはできないから。
ということになります。
つまり、
「やる」=「できる」×「やっても良い」
と因数分解することができます。
「できる」と「やっても良い」の両方が満たされてはじめて、「やる」ということです。
逆に、「無理・ムリ・むり」というときは、「できる」か「やっても良い」かのいずれか、あるいは両方が満たされないからということができます。
「無理・ムリ・むり」と言われたら、「できる」と「やっても良い」のどちらが満たされていないのかをハッキリさせ、満たされていないモノを満たしてあげれば良いのです。
無理なのは、できないのか? やりたくないのか?
穏やかに尋ねてみましょう。
今日の問いかけ
あなたが無理だと思っていることは、できないからですか? やっても良いと思えないからですか?